凛として、軽やかに。

甘くない現実も軽やかに受けとめて、歳を重ねていきたい。と思いつつ、ジタバタ焦る日もあったり。そんな心模様も正直に綴っていきます。憧れの人は、漫画『大家さんと僕』に登場する大家さん。

秋の夜長に〜山口恵以子『月下上海』

2013年に松本清張賞を受賞した『月下上海』。

主人公の魅力、ストーリー展開の巧さにページを繰る手が止まらず、あっという間に読了。


舞台は、第二次世界大戦下の上海。

主人公である八島多江子が上海港に到着するところから物語は始まります。


美しく聡明、そして豪胆な財閥令嬢の多江子。

彼女は人気画家。けれども、その人気は、自らのスキャンダルを利用して手に入れたもの。

画家としての行き詰まりを感じていた彼女は、新境地を拓こうと単身上海へ。


そこで出会う四人の男たちとの関係性を軸に、ストーリーは展開していきます。


多江子を利用しようとする者、彼女を守ろうとする者、彼女に助けられる者、そして彼女の過去の傷を癒す者。


策略、憎悪、愛情、信念、葛藤、赦し。

日本が敗戦の色を深めていく中で、様々な感情が主人公をはじめ、登場人物たちの心に渦巻き、それぞれの運命は大きく動いていきます。


この物語の魅力は、なんといっても主人公の魅惑的なキャラクター。

彼女の持つ光と影、そして一筋縄ではいかない人間の複雑な感情が巧みに描かれていて、気づけばすっかり物語の世界に没入。


他の登場人物たちも、それぞれ光と影を持つ奥行きのある人間として描写されていて、そこに著者の作品に対する愛情のようなものを感じました。


そして物語の底流に感じたのは、戦争の持つ残忍さと非情さ。


軽妙さと深みをあわせもった、秋の夜長にぴったりな一冊でした。


ちなみに著者、山口氏は社員食堂の調理主任を務める傍ら、小説執筆を続け、賞を獲ったという異色の経歴の持ち主。


賞金500万円は全て飲み代に使う、と豪快な発言も話題に。

今度は、山口氏のエッセイなんかも読んでみたいなぁ。



月下上海 (文春文庫)

月下上海 (文春文庫)

 

 

 

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